為替の動向 - 今週(5/8〜)の注目ポイント
先週は、2 -3日にFOMCが開催された(Federal Reserve Board - Federal Reserve issues FOMC statement)
- 0.25%の利上げを決め、政策金利の誘導目標を「5.00~5.25%」とした。10会合連続、昨年3月からの利上げ (累計) は5.0%となった。 2008年9月「リーマンショック」が起きる前の 利上げの到達点に並んだ。
- 銀行破綻が相次ぎ、金融不安が高まる中でも「インフレの抑制」を優先した。
- 声明文から“some additional policy firming may be appropriate”(※3)『いくらか追加的な政策引き締めが適切となるかも知れない』の文言が削除された。
あと“In determining the extent of future increases in the target range”(※4)が“In determining the extent to which additional policy firming may be appropriate”となり、『将来の利上げ幅を決める際』から『追加の政策引き締めが適切であるかを決める際』、委員会は、金融政策の累積引き締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与えるまでの時間差、経済、金融情勢を考慮する。へ変更され、表現が「利上げありき」でなくなった。
パウエル議長は 記者会見で、
- 銀行セクターの状況は3月上旬以降、全体として改善してきた。銀行システムは健全であり打たれ強い。
- 労働需給は、よりよいバランスに戻る兆しがあり、賃金の伸びはやや鈍化している。
- インフレ率は 昨年半ば以降、少し穏やかになったがインフレ圧力は 依然 高く、 2% に 戻すまでの道のりは長い。
- インフレ率が下がるのに、もう少し時間がかかると思っている。 この予想が正しければ
- 利下げは適切ではない。
- 経済は全体として、マイルド・リセッションを予想している。
- 今日は利上げの一時停止を決定しなかったが、声明文から「いくらか追加的な政策引き締めが適切になるかも知れない」の文言を削除したことは、意義のある変化だ。
- 今回の会合では「6月の利上げ停止」について 何も決めておらず、政策金利に関する判断は会合ごとに決定される。“データ次第”のスタンスを維持!
- より強い引き締めが正当化される場合は、更なる利上げを実施する可能性もある。
など慎重に述べた。
「インフレ退治」と「金融不安の払拭」、大変難しい舵取りを迫られる中、今後、利上げを停止する可能性を示しつつ「年内にFRBが利下げに転ずる」と織込みたがる市場を牽制した。因みに 金利先物市場では、今会合後も9・11・12月のFOMCで「0.25%」、計「0.75%」の利下げが見込まれていた。対するFRBの23年末「政策金利見通し」は 現状5.125%、今回の「5.00~5.25%」を維持する方針。
The Fed - Meeting calendars and information (federalreserve.gov)
The Fed - March 22, 2023: FOMC Projections materials, accessible version (federalreserve.gov)
補 足
パウエル議長は「債務上限問題」について警鐘を鳴らしていた。
- 市場を揺るがすリスク要因である。
- 6月1日にも米国債が債務不履行に陥る懸念があり、連邦議会が法定上限の引上げで合意できなければ、前代未聞の事態になる。
選挙が絡むため、同問題は民主党と共和党の「政争の具」とされ、ギリギリのところで危機が回避されるパターンになりそうだが、ドル円の観点からは、緊張が高まると「円高」が進む可能性があり要注意である。1日、イエレン財務長官も『6月1日にも債務不履行の恐れがある』との見通しを示していた。