為替の動向(9/25~) FOMCと日銀金融政策決定会合
◇FOMC(9月19 -20日開催)
<Statement>
Federal Reserve Board - Federal Reserve issues FOMC statement
今回のポイント
- 政策金利の誘導目標を「5.25~5.50%」で据え置くことを、全会一致で決定。
- 声明文は、前回のモノを踏襲。
- Economic projectionsの詳細は以下の通りだが、今回、多くの項目が上方修正され、失業率は下方修正された。国内景気が強く、金利を高く長く維持し、景気よりもインフレ退治を優先する姿勢が示された。特に、2024年と25年の政策金利見通しは0.50% も引き上げられた。株式市場を牽制する狙いもあるだろう。
- パウエル議長は 会合後の記者会見で、
- 昨年3月から 政策金利を5.25% 引き上げたが、引き締めの完全な効果は まだ見えない。
- どの程度の 追加引き締めが適切か、慎重に判断する。
- 金融政策は、今後のデータやリスク評価に基づきFOMCごとに決められる。適切なら更なる利上げを行う用意がある。
- 実質GDPの伸びは予想を上回っており、個人消費が 特に強い。
- 賃金の伸びに 鈍化の兆しはみられるものの、労働需要は 依然 供給を上回っている。
- UAW (United Auto Workers、全米自動車労働組合) のストライキ、政府機関の閉鎖、学生ローンの返済再開、長期金利の上昇などがリスクとして挙げられる。
- エネルギー価格の高騰が続けば、インフレに影響が及ぶ可能性がある。
- 昨年半ば以降 インフレ圧力は 幾分 和らいだが、インフレを2%へ 引き下げるには まだ長い道のりがある。
- 「利下げ」の時期についてシグナルを送るつもりは全くない。ある時点で「利下げ」が適切になろうが、それがいつなのか? 現時点では話せない。
など述べた。
<Economic projections>
The Fed - September 20, 2023: FOMC Projections materials, accessible version (federalreserve.gov)
実質GDP見通し(以下、第4四半期の中央値)
23年 1.0% ⇒ 2.1% 、24年 1.1% ⇒ 1.5%、25年 1.8% ⇒ 1.8% 前回 (以下、23年6月予想) から 大きく上方修正され、経済の先行きに対し自信を深めている。尚、FRBは 先行きに対し楽観的すぎるのではないかとの見方もある (神のみぞ知るである)。
失業率見通し
23年 4.1% ⇒ 3.8%、24年 4.5% ⇒ 4.1%、25年 4.5% ⇒ 4.1% 全て改善する見通しで、労働需給のタイト感は続く。失業率 や インフレの観点から、先ずはUAWのストの行方に注目か?
インフレ率(Core PCE inflation)見通し
23年3.9% ⇒ 3.7%、24年2.6% ⇒ 2.6%、25年2.2% ⇒ 2.3% 改善しているが インフレを2%へ 引き下げるには、まだ長い道のりがありそう。
政策金利見通し(年末時点の中央値、小数点第一位まで表示)
23年5.6% ⇒ 5.6%、24年4.6% ⇒ 5.1%、25年3.4% ⇒ 3.9% 繰り返しになるが、23年に あと「0.25% × 1回の利上げ」が見込まれている。
<補 足>
* 年内に 政策金利の誘導目標を「5.50~5.75%」へもっていきたい 参加者が 12/19人いた。Figure 2. をご参照下さい。 データやリスク評価 次第では、11月か12月FOMCで 利上げが実施される可能性がある。
The Fed - Meeting calendars and information (federalreserve.gov)
* 本見通しは「中央値」である。Figure 2.の通り、24年以降の予想は 大きく上下に ばらけている。これは 世界の頭脳と呼ばれる様な方達でも不確実性が高く予想が困難である と解釈。あと、24年の見通しを「6.00~6.25%」としたのは ボウマン理事であろう。
* パウエル議長は『中立金利が上昇している可能性がある。』と述べたが「Longer run」は2.5%で据え置かれた。
◇日銀金融政策決定会合(9月21 -22日開催)
<当面の金融政策運営について>
k230922a.pdf (boj.or.jp)
今回のポイント
- 短期金利をマイナス 0.1%、長期金利を0% 程度に誘導する 金融緩和策の現状維持を、全会一致で決定。
- フォワードガイダンスに変更なし。
- 植田総裁は 会合後の記者会見で、
- 物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況になく、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。
- 物価目標の実現が見通せる状況に至れば、政策の修正を当然 検討するが、現時点では 経済・物価を巡る不確実性が極めて高く、政策修正の時期や具体的な対応について決め打ちできない。
- 物価の先行きは、10月の展望レポートで精査する。
など述べた。
尚、金融政策と為替政策を区別するため、あえて? 現在の「円安」水準について 踏み込んだ発言はなく、牽制もしなかった。相変わらず 慎重で 今回 動かなかったが… 個人的には 10月に 展望レポートの「消費者物価指数(見通し)」を上方修正し、ここでYCCを撤廃する可能性はあると考えている。
2023年の金融政策決定会合等の日程 (boj.or.jp)
以下 読売報道については、火消しに走った印象。
- 賃金と物価の好循環を見極めるためのデータが 年内にも揃う可能性がある。
- 賃金上昇をともなう持続的な物価上昇に確信が持てる段階となれば、マイナス金利の解除も含めて 色々なオプションがある。