【投資について語るときの愛と追憶】「友達の勤務先の株を調べよう」 by 黒猫投資家
身近な会社に投資しよう、というのが初心者への私のアドバイスだが、勤務先の会社の株の売買には、インサイダー取引の疑いをかけられるリスクもある。つまり、重要な取引に関する情報を知ったうえで、株を売買して不当な利益を得ると犯罪になる可能性があるのだ。社員持ち株会や会社の定める手続きにそって取引を行うなど、慎重にならなければならない。決算の前や新規ビジネスが計画されているときなどに、必ずしもその情報に接する立場にいなくても、疑いをかけられる可能性があるので、自分の勤務先の株式を個人的に売買することはやめたほうがよい。
私は、友人やその家族が一つの会社に長く勤めているとき、その勤務先の株式は重要な候補にしている。長年その会社に勤務し続けている、ということはよほど社員にとって居心地がいいのか、勤務し続けることが有利だという投資判断がそこにあるのだと仮定する。もちろん、友人に具体的な事業の動向などは尋ねてはいけない。間接的でも重要なビジネスの情報を聞いてしまうと、インサイダー取引になるかもしれないのだ。あくまで、雰囲気を聞く。パワハラあるのかないのか、居心地がいいのか、カルチャーや取引先との関係などを聞いたりする。社員が健康で生き生きと働いているのか、社長がどういう考え方の持ち主なのか。社員は製品やサービスを愛しているのか。そして、四季報などで売り上げや利益の推移、配当政策などをみる。これらの情報をもとに、よい感触を得たら、まずは、最低限の投資単位を買い、株価の動きを数か月間観察する。このお試し期間を経て、私の証券口座で、長いお付き合いの株になるのか、短い付き合いで終わるのかがきまる。
多くの場合、最低購入単位であっても買うに至るには、それなりに良い動きをしていることが多いからである。どういうわけか、買ったあとすぐに、少し上がる。しめしめ、私の投資判断は正しかった。もう少し買い増そう、となる。そして、少し追加する。5パーセントくらい上がってくると、どうしよう、もっと買うか、あるいは、いったん下がるのを待つか、煩悶しだす。さらに2割ほど上がると、売るべきなのか、とも悩む。
突然、相場全体が下がって、急落してマイナスになる。オイオイ、私が見込んだオトコ(株ですが)が、こんなところで、引き下がっているんじゃないよ、と毎日声をかける。
配当のでる株だったりすると、配当が出る分で、投資元本割れは回収すればよいので、長い目で見てあげましょう、と息子(株ですが)の成長を見守る親のような気持になる。
急に海外でのプロジェクトの失敗のニュースや不正事件で社内告発などがあると、ジェットコースターのように株価が下がったりする。騙されたのか、私は? 付き合い始めたころは親切だったのに、その裏で不正を働いていたなんて、詐欺師だったのね、などと言って、売ってしまい損きりをする。すると、突然、悪材料出尽くし、などというわけのわからない相場ニュースがでて、急に株価が回復し、捨てた男(株ですが)が出世したのかよ、と何とも言えない悔しい気持ちになりながら、過去は振り返らず、新しい株を私は探すのよ、とか言い出すのである。
こんな具合に、株との出会いはロマンスにあふれ、退屈な日々に彩りを添えてくれる。別れた株も、また出会うことがある。生きているうちしか出会えない。買ってみないとわからない。株式投資は、結婚相談所、あるいは一方的なマッチングアプリのような出会いと別れに満ちている。そんな出会いと別れから個別株を取り出すとすれば、以下の3つだろうか。それぞれ、どうしてこのように思うのか、ぜひ、読者には調べてもらいたい。
これまでもこれからもずっと愛し続ける株: 伊藤忠
詐欺であっても、また騙されたい株:ライザップ
じっと成長を見守り続けたい株:AGC
執筆:黒猫投資家(猫と人間のほんとうの幸せを探求する女性個人投資家)
猫と人間のほんとうの幸せを探求する女性個人投資家が紡ぐ不動産、株、投資信託物語
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