債券についての基礎知識
- 債券
債券とは、有価証券となっている公社債のことをいいます。資金調達をしようとする国や地方公共団体、企業などの発行体が、多数の投資家から資金を借入れた借用証書を有価証券として発行したものです。
国か発行する国債、地方公共団体が発行する地方債、企業が発行する社債、金融機関が発行する金融債などがあります。
債券では、発行体が発行時に定めた返済の期日(償還期日)までの期間中に一定の利子を支払うことを約束しています。
債券は、一般的には、発行されるときに決められた固定金利が支払われ(固定利付債)、満期時点で額面金額が返還(償還)される仕組みになっています。
満期以前の換金は売却によって行います。中途換金する場合には、その時点の市場価格によるのが原則です。市場価格は日々変動し、購入時点の価格よりも、値上がりすることもあれば、値下がりすることもあります。
つまり、債券は、満期(償還期日)まで保有していると、額面金額で償還され、満期前であっても時価で売却することもできます。
公社債の利子は、一般的に半年ごとに支払われ、通常、保護預り先の金融機関に作った口座へ振込んでもらうなどして受取ります
公共団体が発行する公共債は、証券会社、銀行、信用金庫、信用組合、郵便局(国債のみ)、保険会社などのほとんどの金融機関で取扱っています。企業が発行する社債、外債などは証券会社で取扱っています。
1.債券の種類
債権は、発行体、利払い方式、新旧で分類することができます。
(1)発行体による分類
公社債は、発行体の違いによって、3つに分けられます。①国、地方自治体および公共機関の発行する「公共債」、②民間企業が発行する「社債」、③外国の政府・政府関係機関、事業会社が発行する「外債」があります。公共債に「国債」「地方債」「政府関係機関債」があります。
(2)利払い方式による分類
公社債は、利払い方式によって、利付債と割引債に分けられます。
利付債は、発行されるときに決められた金利(利率)が満期まで変わることなく支払われる固定利付債が一般的です。そのほかに、その時々の市場金利に連動して利率が変わる変動利付債もあります。
割引債は、利子がないかわりに、あらかじめ額面から利子相当額を割り引いた価格で発行され、満期時に額面金額で償還されます。
(3)新発債と既発債
新発債は、新しく発行される債券です。新発債を購入した日から満期償還日まで所有した場合の利回りは、応募者利回りと呼ばれます。
既発債は、すでに発行され市場で取引されている債券です。既発債の価格は、金利情勢などによって日々変動しています。既発債を購入した日から満期償還日まで所有した場合の利回りは、最終利回りと呼ばれます。
(4)円貨・外貨
円建て債券は、払込み、利払い、償還が円貨で行われる債券です。
外貨建て再建は、払込み、利払い、償還が外貨で行われる債券です。
(5)発行価格
債券の発行価格は額面100円あたりの価格で表示されるのが通常です。その価格によって次のように分類されます。
- パー発行:額面と同じ金額で発行される場合
- アンダー・パー発行:額面より低い金額で発行される場合(例:97円で発行)
- オーバー・パー発行:額面より高い金額で発行される場合(例:103円で発行)
2.債券を売買する方法
金融商品取引所に上場されていない債券(非上場債券)は、証券会社の店頭で投資家と証券会社とが相対で取引を行う店頭取引により売買され、金融商品取引所に上場されている債券(上場債券)は、証券会社を通じて金融商品取引所に注文を出す取引所内取引だけではなく店頭取引でも売買できます。
店頭取引は、個別に行う相対取引なので、取引所内取引と異なり統一された取引価格がありません。もっとも、店頭取引価格の参考統計値を、日本証券業協会が「公社債店頭売買参考統計値」としてウェブサイトで公表しているので、それを参考にすることはできます。
(https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/index.html)
多くの債券は、取引所での取引より、店頭での相対取引によって取引されています。
3.債券の手数料・費用
(1)公社債の売買費用
新発債は、手数料なしで購入できますが、既発債の売買取引については、取引形態によっては売買委託手数料がかかります。既発債の手数料は、取引形態などによって違ってきます。
(2)売買の費用
店頭取引で公社債を売買するときは、取引価格に必要な費用が含まれています。取引所内取引で公社債を売買するときは、取引価格のほかに売買委託手数料が必要となります。
4.債券の選び方
債券投資をする場合には、その債権が有するリターンとリスクを把握し、自分の資産形成目的にあった債権を選ぶことが重要です。
債券投資のリターンは、利率や、購入時の価格と額面の差額からある程度判断できます。これは将来の株価や配当額が読めない株式とは大きく異なる点です。
債券投資のリスクとしては、(1)信用リスク、(2)価格変動リスク、(3)為替変動リスク、(4)流動性リスクの4つがあります。
債券投資をする場合には、満期まで保有することも一つの方法ですが、金利や為替の動向に注意を払い、適切なタイミングで売却することも重要な手法の一つです。
(1)信用リスク
債券投資をする場合、発行体の経営悪化などにより元本の返済や利子の支払いが滞ったり、経営破綻などにより倒産するリスクがあり、このようなリスクを信用リスクとよびます。
信用リスクは、「目論見書」に記載されている、発行体の事業内容や財務状況などに関する情報や公社債の発行条件からある程度判断することができます。
もっとも、個人投資家が、目論見書から信用リスクを判断することは簡単ではありません。そこで、参考として、ムーディーズ、S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)、格付投資情報センターといった格付機関が発行する格付けを参考にすることができます。格付けは、公社債ごとに、格付機関が評価して、その度合いを簡単な記号(AAA「トリプル・エー」、B「シングル・ビー」など)で表したものです。Aが最も格付けが高く、B、C、Dと下がります。BBB以上が投資適格債とされ、BB以下が投資不適格債とされています。投資不適格債はハイ・イールド債、ジャンク債とも呼ばれています。投資不適格債は、信用リスクは高いですが、それに応じて利回りも高くなっています。
なお、同じ発行体の債券でも格付機関によって格付けがことなることもあります。また、同じ発行体の債券でも発行時期や利率により格付けは異なります。
格付けは絶対的なものではなく、高い格付けであれば絶対安心ということはありません。
(2)価格変動リスク
公社債の保有期間中の資産価値が市場金利などに応じて変わるリスクのことを価格変動リスクといいます。
公社債を償還するまで持たずに換金する場合には市場価格で売却することになりますが、この市場価格は、景気や政策などさまざまな要因による金融情勢を反映した市場金利の変化に応じて変動します。一般に、金利が上昇すると市場価格は下がり、逆に、金利が低下すると市場価格は上がるという関係にあります。
これは、金利が上がると、金利が低い時に買った債券を売って、金利が高くなった債券を買おうという動きが起きるため、金利上昇前の債券が売られるため、債券価格が下落するためです。金利が下がると逆の動きとなり、債券価格が上昇します。
(3)流動性リスク
公社債を中途換金する場合には、価格変動リスクのほかに、買い手がなかなか現れず、希望するタイミングに売却ができないことがあり、このリスクを流動性リスクといいます。
(4)為替変動リスク
外貨建ての債券は、為替相場の変動によって円に換算した受取額が変わるリスクを為替変動リスクといいます。購入時に比べて為替相場が円安になった場合は円での受取りが増えますが、逆に円高になった場合は円での受取りが減ることになります。