【東大大家の素人投資日記】立ちすくむばかり

 いざ口座を開設しても、画面中にならぶ単語は分からない単語ばかりだ。傍らで引けるように株式の用語事典を買い求めてみたが、あまりものの役に立つものではなかった。

 しかし、自分で固有銘柄をもって売り買いする人に対して、インデックス投信は8割方勝ち越すという俗説を目にする。もしその俗説が本当であれば、市場プレイヤーの精鋭2割を出し抜くつもりは毛頭無いし、いちばん手堅く実績のある方法を取りたい。積立NISA枠は年間40万円だから、月三万円ずつインデックス投信として評判の高いものを買えばよいハズだ。したがって株式ソフト上のわからない単語に、いちいちひるむ必要など何一つない。とてもシンプルな手続きのはずだ。

 日本人だから、当然日本の株を買いたいという心はあるのだけれど、この100年間でひたすら伸び続けているのは、アメリカの株式市場だ。理由は分からないものの、最近でも日本の市場平均は5年10年ごとに低迷していて、伸びていない。明治維新以来、日本人は世界にあっても勤勉で優秀な民族だと思いたい心はあるのだけれど、なぜか現状日本の市場はそのことを証明していない。あえてそれを買って愛国心を満足させる手もあるが、それは一市民の任にあまる。あまり葛藤をかかえずに米国S&P500のインデックスを買うのが、おそらくこの100年の経験則であろう、と思う。そもそも円預金に対する危機感を分散することが、僕がそれまで興味のなかった証券口座までつくった理由である。米国金利高に伴う猛烈な円安の進行がどのように均衡するのかは非常に気になるものの、それを僕が案じたところでどうなるだろう。

 ネット上では、積立NISAに関していくつかの抗弁もみられるものの、ほとんど信じるに足るものはないと感じる。しかし二つのフレーズは気に入った。ひとつは積立NISAについて「ほとんどオモチャのような枠」と表現したものだ。大きなお金を市場で動かしている人であれば、そういう気にもなるのだろう。そういうビッグな心持ちをいつまでも大事にしてほしい。もう一つ気に入ったのは、その逆で、「積立を行うことで、現在の生活が崩れる可能性に留意せよ」というものだ。どちらかというと、僕は後者のフレーズを気にした。生活そのものに支障をきたすようであるなら、それはそもそも投資を行うのに不適切な立場だということになる。これはよくよく吟味する必要がある。

 それ以外の事柄については、すべてあとで考えよう。しかるべき手続き、すなわち積立NISA口座と購入すべき投資信託を確定させる手続き、を経たのちに、その余りの事柄として考えれば良いことである。

 さて、そこまで確定しているのに、何を僕がうろうろしているかというと、これこそまさしく「心理障壁」というものにほかならない(優柔不断といいかえても差し支えない)。慣れないネット証券のインターフェースは、心理的に確定した案件にあってなお試練となる。なみならぬ度胸が要求されるということだ。

執筆:東大卒大家

[東大卒、ゆえあって大家業を営む筆者が、友人のオールイヤーズ運営事務局に原稿執筆を懇願され、証券投資を始めることに。ド素人の観点から証券投資について語る。毎週1回更新予定。]

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作成日:2022/07/13
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Allears オールイヤーズ事務局で作成した記事です。