【投資について語るときの愛と追憶】「有望株を探せ」by 黒猫投資家
機関投資家のアナリストは、上場企業のなかから調査範囲を定め、個別の対象企業をリサーチし、時には、訪問して担当者に質問し、アナリストレポートを作成し、ランク付けをして投資判断の材料にする。実際にこのレポートが、所属する機関投資家の投資に反映されるかどうかは、さらにファンドマネージャーの判断やベンチマークとの兼ね合いもあるとはいえ、アナリストを多数抱えていたり、そうした専門家に委託できる機関投資家は有利なように思えてしまう。
しかし、個人的な見解だが、調査能力があることと、最終的な運用成果が良いかどうかは、常に一致しないと思っている。機関投資家の運用方法には、運用期間やベンチマークなど属人性を排除する様々なコントロールがあり、一般的には、状況に合わせて柔軟な対応が困難だ。個人投資家には、こうした制約がないことを逆手にとって、いろいろな方法をつかって、リサーチし、運用成績をとがらせていくことは可能なのではないだろうか。
優秀な友人やその友人の配偶者の勤務先の会社の株価を継続的にウオッチする、というのが私のスクリーニング方法の一つであるが、そのほかに、人材募集を熱心にやっている会社に注目するという方法がある。セールパーソンやマーケティング担当者を盛んに採用している会社は、新規事業が急激に伸び、社内の人事異動だけでは間に合わず、拡大に向けて投資をしている可能性が高い。
もし、自分が応募できる職種があれば、とりあえず、応募してみるのもよいだろう。求人のプロセスにおいて、企業は自社の製品や顧客層、売れ行きなど、企業秘密に該当しない範囲で、率直に企業の課題と成長について説明してくれる。投資に値する企業かどうか、ヒントになることがある。
あるとき、不動産テックの企業が求人をしており、私は、転職する気はなかったものの、その会社のビジネスモデルや資金調達の仕組みなどが気になり、面接を受けに行った。根掘り葉掘り、ビジネスモデルについて質問し、どういう人材がいるのか、担当者を質問攻めにした。その質問に嫌な顔をせず対応し、泥臭いはずの不動産業界には珍しく、理路整然とシンプルに回答する様子に、なかなかこの会社は優秀な人材がいるのだなと思うようになった。もちろん、転職予定がない旨は丁重にお伝えしたが、その後も、継続的にウオッチしている。ちょっとした知人のような気分の銘柄となっている。
テレビのCMや広告に急に頻繁に登場するようになった企業も有望な候補だ。山手線の車両の中の画面に繰り返し登場する企業広告には特に着目している。どれほど大きなマーケティング予算を振り分けているのだろうか。ある程度、社内でも売り上げに強気の予想がないと、多額のマーケティング費用を正当化するのは困難である。コンシューマー向けの製品の場合にしろ、B to Bにしろ、ひとまず、こうした企業の業績や株価はチェックするに値する。このような観察を経て、私は、AGCやヤーマンに気づき、買い付け始めた。株式のニュースはたくさん配信されているが、逆に銘柄が多すぎたり、小さい企業の決算のブレから急騰した銘柄を数多く取り上げていたりして、デイトレーダーでもない限り、あまねく情報を拾うのは難しい。個人であれば、せいぜい20-30銘柄程度しか記憶できないのではなかろうか。人が恋に落ちるのは半径3メートル以内の人だそうだ。有望株との出会いもどうやら半径3メートルらしい。
執筆:黒猫投資家(猫と人間のほんとうの幸せを探求する女性個人投資家)
猫と人間のほんとうの幸せを探求する女性個人投資家が紡ぐ不動産、株、投資信託物語
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