【投資について語るときの愛と追憶】「時間を味方にする投資とは」by 黒猫投資家

 

 個人投資家の最大の強みは、「時間」だという。いわゆる機関投資家、例えば年金基金だったり、投資信託の運用をしているアセットマネージャーの場合には、投資方針が事前に決まっているので、定期的な決算ごとに成果を問われ、基準となるベンチマークと比べてリターンが少なかったり、市場に大きな混乱が生じて一時的に大きな損が出た時に、投資方針に従って、損きりしたり、ファンドを償還したりしなければならないことがある。これに対して、個人投資家であれば、自分の投資方針を柔軟に変更して、じっと我慢して運用資産が回復することを待ったり、追加投資を行って、市場が回復する過程で大きく運用益を増やす可能性がある。個人投資家は、機関投資家に比べて、ゆっくり時間をかけてリターンを得ることができるという意味である。

 この比較を踏まえて、個人投資家は、時間を味方につけるためにも、若いころから投資をすべきだ、という提言を最近聞く。

 「若いころからリスクを取って、お金持ちになろう」

 本当だろうか?

 まず、最初の疑問点は、20代や30代などの若者に、株式や不動産の投資に振り向ける余裕資金があるのか、ということだ。

 実際、私の場合には若いころには、株式投資や不動産投資に振り向ける資金はなかった。
 正確にいうと、株式や不動産投資よりも自己投資のほうがリターンが高い、と当時も今も、私は考えている。
 20代から30代前半、学業や仕事の選択はその後の人生に大きな影響を与える。
 どの仕事でも、完全に幸福な職場などはしょせん存在しない、とはいえ、少なくとも、一人で生きていくための一つの収入の柱として仕事上の技能を確立する必要がある。
 私の場合、20代後半に当時の勤務先を退職して、それまでに貯めた1000万円程度の自己資金を使ってアメリカの大学院に留学した。帰国後、就職した結果、年収は留学前の職場の2倍程度になった。さらに、その2年後に外資系の金融機関に転職したところ、年俸は2割程度増え、退職金や福利厚生などの条件も向上した。最初の勤務先の給与から比べると、総合してみると2.5倍程度増えたことになった。

 私は帰国子女ではないし、英会話はそれほど得意ではなかったので、振り返って考えると、よく外資系の金融機関が採用してくれたものだと思う。しかし、外資系の企業のなかには日本に進出したばかりで規模が小さく、人気のない業種や知名度の低い会社もある。日本では中小企業なのに、本国では大企業なので、雇用条件は、外国の本国基準となり、相対的に給与が上がるのである。そんなわけで、つたない英語ながらも、なかなか応募者もおらず、ひろってもらえたのだろう、と今でもその会社に対して感謝は尽きない。
 私の留学資金の1000万円の投資リターンは、転職後に給与が2.5倍となって戻ってきたということになる。

 これが投資信託や株だと、このレベルのリターンは非常に困難だ。

 自分で、投資金額と想定リターンを設定して、結果がいくらになるのか、シミュレーションできる計算機がウエブ上にいくらでもあるので、自分で計算してもらいたい。
 例えば、月額10万円を投資に回すとして、一年間に7パーセントを10年間想定するとする。若いころに余裕資金から毎月10万円を投資に回すのは、なかなか大変なことであるし、常に7%のリターンが10年継続するという仮定も楽観的な水準だ。こうした数字を入れてシミュレーションした結果は1700万円程度であった。投資元本は1200万円で、有価証券の売買又は配当の利益に相当する部分の500万円から税金が2割程度ひかれると、現金では400万円が純粋はリターンということになる。
 しかし、若いころに語学力や資格の取得、プレゼン能力、論理的な思考力をみがくことにより、収入の高い勤務先に転職することができれば、50万円、100万円といった具合に給与が増えたり、ボーナスが上がる可能性は十分に高い。株式投資や投資信託、不動産投資で10パーセントの利回りを出すことは困難だが、給与を1割増やすことを目的に転職活動に取り組むことのほうが、容易でもあり、その後の人生においても継続的に有利なのではないだろうか。

 1割収入を増やすには、どうすればよいか? 
 このシンプルな問いに対する回答は、個人の置かれた立場によって異なる。

 節約によって支出を減らす。

 株式に集中投資する。

 投資不動産を探して、融資を利用して購入する。

 自分に合った選択をしてもらいたい。
 ただ、若いうちは、特に、仕事や経験の幅を広げることの期待収益が大きいことを忘れないでもらいたい。私の平凡な投資人生をみると、株式はおおむね6-7%、不動産は4%程度が平均リターンである。振り返って考えると、20代は自己投資のリターンが大きかったからこそ、その後に不動産や株式投資のタネ銭ができたのであった。株や不動産には、年をとっても投資できる。しかし、若いころにしかできない経験に投資する、というのは、本当の意味で、「時間」を味方につけた投資なのではないだろうか?

執筆:黒猫投資家(猫と人間のほんとうの幸せを探求する女性個人投資家)

猫と人間のほんとうの幸せを探求する女性個人投資家が紡ぐ不動産、株、投資信託物語

「時間を味方にする投資とは」

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作成日:2022/08/17
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Allears オールイヤーズ事務局で作成した記事です。